スペインの西の果ての岬の町後世のイスラムとの戦いの時、その霊が白馬に乗って国を救ったという。 スペイン巡礼路800kmの目的地は、そのサンチャゴを祭った壮大な大聖堂。 巡礼宿に泊まれる条件は馬か自転車か徒歩の旅。 徒歩なら炎天の中の30日。自己発見の喜びと試練の旅が続く。 そして、遂に聖堂での、大僧正によるミサ。 みんなの顔にはやっと着いたという安堵があった。 しかし、なぜか、到着とともに別の思いが生まれる。 知り合った多くの巡礼者と、もう二度とあえないという思い。 歩き詰めて、目的地に到達して、まだなにか物足らない人。 このまま、現実に戻っていくのが惜しいという思いの人。 まだ、神や自分との対話で心の整理がついてない人。 いろんな思いで、巡礼者は、更に西の果ての岬Finistereへと向かう。 そこには、もうこれ以上、行きようの無い海が広がっている。 みな、この広大な海を見て、どこか納得する。 そして技師をやめて牧師になる人、離婚してひとりで生きていく人。人生模様はさまざま。 人生の節目の転換期に来て、長い旅の間の自己との対話で迷いが吹っ切れる。 そして、ほんとうのの旅は、ここから始まる。 この岬の名は、フィニステレ。「地の果て」を意味する小さな港町。 海のそばには、とれたてのメルルーサや海老を食べさせるレストラン。 屋外で炭火で鰯を焼くにおいがただよってくる。 顔見知りの精悍な巡礼者がテーブルから声をかける。「一緒に鰯を食べないか」と。 夏のスペインの夕暮れは9時すぎまで明るく、美しい。 夏の太陽は、なぜか、消え去る少し前に、えもいわれぬ色調を見せる。 ほろびの前の輝きのような。 港の色とりどりの舟がいっせいに、不思議な色に輝き始める。 |